平成23年3月11日午後2時46分過ぎ。女性は、大きな揺れの後、津波の来襲と高台への避難をひたすら呼び掛け続けた。「6メートルの津波が来ます。避難してください。」と。女性は自分の命のあらん限り、最後の最後まで住民に避難を呼び掛けた。最後の方の声は震えていた。そして、呼び掛けは途絶えた。
宮城県南三陸町危機管理課職員、遠藤未希さん(24)は3階建ての防災対策庁舎の2階で必死になって、住民に津波にのまれないよう呼び掛け、自らの命は悲しくも庁舎にいた20名の職員と共に津波にさらわれてしまった。この時の未希さんの必死に避難を呼び掛ける気持ちはどうだったのだろう。町の職員として、津波から住民を守ろうと職務に忠実に取り組むことが自分の仕事と考えたのだろう。自分も逃げなければ命を津波に奪われることを忘れ、住民の命を優先したの
だろう。
『南三陸町は人口約1万7千人。約8千人の所在が分からない。それでも避難所へ逃げた女性(64)は「あの放送でたくさんの人が助かった。町民のために最後まで責任を全うしてくれたのだから」と思いやった。「ご苦労さま。ありがとう。という言葉をかけてあげたい。」と父親の清喜さんは涙ぐんだ。」と当時の新聞がこのことを報道していた。自分の命を犠牲にして町民を救おうとした未希さんの崇高な行為は、職務を全うした公務員の鏡と言うべき行為だろう。未希さんの尊い命はそしてその行為は、私の心の中に、人々の心の中にこれからも生き続けるであろう。
一方、警察庁によると平成23年の自殺者数は3万513人で平成10年以降14 年連続3万人を超えているという。このデータは交通事故の死者の数を上回るという。由々しい事態である。この自殺者の中に残念ながら中学生が含まれている。何とも痛ましいことである。昨年の8月30日。札幌の中学2年の男子生徒が人間関係の悩みからマンションから飛び降り自殺したという。また、9月1日には東京葛飾区の中学1年の女子中学生がやはりマンションから飛び降り自殺したという
報道がされた。2学期の始業式当日のことである。人間関係の悩みからと思われる。友達とうまくいかない、友達が出来ない、自分の存在がうまくクラスの中で生かされない等々、思春期のこの時期、デリケートに悩むことはよくある。何とか悩みを聴いてやって救うことが出来なかったか。残念でならない。これから長い人生の中で、きっと良い友達が出来たり、先輩が出来たり、人生の楽しさを味わえたはずだ。痛恨の極みである。そして、今年に入って、さいたま市ではマンションの屋上で遊んでいて誤って転落し中学生の男子が死亡するという事故があった。自分自身や周りが気をつければ守れた命だ。
1月13日イタリア中部のジリオ島沖の地中海で乗員、乗客約4千200人を乗せた豪華客船コスタ・コンコルディアが座礁する事故があった。船は水浸しとなり、22日現在、死者13名、行方不明者20人という事故だ。さらに、船の2千380
トンの燃料漏れが懸念され、人命救助とともに作業員による昼夜問わずの懸命な抜き取り作業が行われている。重大な事故にも拘わらず船長は、船内で救助を待つ乗客を残し船外へ脱出したという。「船に戻れ」という救助隊の隊長の言うことも聴かずに。直ちに船長は逮捕された。
この船長は人命を預かる責任者としての処し方、人命をおいて逃げたという人間としての不名誉を追求されるであろう。今、彼は生きているが、生きた心地がしないだろう。
諸君、人間は価値ある使い方をするために、尊い命を父母からいただいたのだ。
(平成23年度2月)
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