年の瀬もせまり、何かとあわただしい恒例の日々を送っている今日この頃であります。
師走とはよく言ったもので、本校の職員もこのひと月めまぐるしい日々を過ごしました。お陰様で2学期を終了する日を迎えることができました。
 先日、何気なく自宅のテレビのスイッチをつけると、私の好きな相撲の番組をやっていました。
それは、今年度のアマチュア相撲の横綱を決める、第52回全日本相撲選手権大会でありました。
大学生や社会人で、全国の予選を勝ち抜いた、32人の精鋭によって争われ、ぶつかり合う様は、テレビであっても迫力万点でした。その中で、覇権を制し、天皇杯を手にしたのは、静岡県立焼津水産高校の教員、加藤耕一選手(30歳)です。
 加藤選手はこの大会の出場が、実に14回目ということですが、過去最高の順位は3位だそうです。身長190㎝ 体重150㎏の立派な体格。聞けば、引退した横綱貴乃花と同年で、少年時代は何度も20対戦したライバルであったとの事。一方はプロの相撲取りに、一方はアマチュアの道を選んだ。
試合後のNHKアナウンサーによる加藤選手へのインタビュー。加藤選手は、感激でしばらく言葉にならない。しばらくすると、一筋の涙が頬を伝わり、しぼり出すような声で「小学校、中学校、高校、大学、そして今日迄相撲をとってきてやっと念願が叶った、とても嬉しいです」と一言。そのあとはまた言葉にならない。私は、テレビの画面を通して加藤選手のこの涙の中に、様々な思いがつまっているのだろうなあと思いながら彼を見つめた。辛かった思い、悔しかった思い、両親の応援、お世話になった人たちのことなど、相撲を始めて20数年の様々な思い出が、浮かんでは消え、浮かんでは消えて涙となったのであろう。
 涙には種類がある。嬉し涙、悔し涙、悲しい涙、もらい涙、感動の涙…。皆それぞれの涙に、深い意味合いがある。
 大愚良寛(たいぐりょうかん)とは、禅宗のお坊さんとしての正式の名前で、良寛さんとして親しまれ、絵本などでは、子どもたちとかくれんぼをしたり、手まりをついて遊んでいる童心そのもののどなたもご存知のお坊さんです。ある日、良寛は弟に頼まれます。弟の子に馬之助という道楽息子があり、この甥に意見するように言われ、ほとほと息子の教育に困った弟の気持ちに答えようと弟の家に泊まり、何度も馬之助と顔を合わせますが、話を切り出すことが出来ません。どうしても自分の若い頃の姿と重なって、もっともらしい意見や説教が出来ないのです。三晩が過ぎて四日目の朝、五合庵(良寛の自宅)に帰ると言って玄関で、馬之助にわらじ(今の靴)のひもを結んでくれるように頼みます。素直にしゃがんで、叔父のわらじのひもを一生懸命に結ぶ馬之助の襟もとに、冷たいものが落ちました。はっと見上げた馬之助には、良寛の両目から涙がこぼれるのが見えました。そして、馬之助の道楽は、この日からぷっつりとやんだのです。
 良寛の涙は、一体どんな種類の涙だったのでしょう。年の終わりに、我が身を振り返り、良寛の涙に照らしてみれば、流す涙は反省の涙であります。また一からです。皆々様には、良いお年をお迎えくださいますようお祈り致します。今年一年のご支援・ご援助ありがとうございました。
(平成15年度12月⑵)